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夢見る文系スケートボーディング愛好家

Sylvain Tognelli interview from Grey Skateboard Magazine

今週はDVD『Eleventh Hour』の発売記念としてUKのフリー・スケート・ジン&ウェブのGreyによるインタビュー・シリーズの翻訳を毎日アップしておりますが、第三弾はSylvain Tognelli。近年、ヨーロッパでも指折りのスケート・シティとなったベルリンのシーンの原動力の一人だが実はフランスのドル出身。BlueprintからIsleの立ち上げメンバーにも抜擢され、間髪入れずにプロとなった彼にとっては国境もストリート・スポットもただただ飛び越え、乗りこなすためにあるようです。

DVD『Eleventh Hour』はただいま発売中ですが、インタビューは発売直前に発表されたものであるために現時点では表現に食い違いも生じています。あえて原文のままで翻訳を掲載しましたことをどうかご了承ください。


Sylvain Tognelli
interview
from Grey Skateboard Magazine web
taken with permission
original interview by Henry Kingsford
translated by Katsushige Ichihashi(Luecke)
http://www.greyskatemag.com/2013/09/sylvain-tognelli-interview/

Portrait Henry Kingsford
『Eleventh Hour』のインタビュー・シリーズ第三弾はIsleLakai、そしてCarharttのライダーであるSylvain Tognelli。DVDの発売日は10月5日にせまり、目下Slam City Skatesで予約可能。作品『Eleventh Hour』はLakaiFourstarIsleSlam City Skatesの協賛を受けています。

撮影の経緯が他の参加メンバーとはちょっと違うよね? まずはその話から聞かせてよ。

Jake(Jacob Harris)と以前にBlueprint用に一緒に撮影していた映像が今回の作品に使われる予定ではあったんだけど、Lakaiが本格的に協賛することになって僕もセクションのひとつくらいは作るように言われたんだ。どのみちロンドンにいるときはみんなとつるんでいたから別に無理強いされた感じはしなかったね。当時はLakai用にもセクションをひとつ完成させようとしていたから一週間という期限を決めてVXを使ったGreyの撮影ツアーに臨むのは僕にとっても都合が良かった。結局、その一週間のツアーを4回やった。個人的にもいろいろとあった中、1ヶ月でセクションを作り上げるのはかなりのチャレンジだったけど結果はいい感じになってくれたと思う。僕には地元で長期間いっしょに撮影できるフィルマーなんていないからさ、こういう撮影ミッションや短期間で仕上げるセクションには慣れているよ。ちなみに今年は僕のそういうセクションが4つ発表される予定だよ。

かなりのプレッシャーがあったと思うんだけど、そういう経験もどうにか楽しめた?
いや、特に期待もなかったから撮影中もプレッシャーは感じなかった。短期間でできるかぎり多くの素材をものにするためだけにこのチャレンジを自分に課したんだ。その瞬間に撮りたいものやアイディアがあれば万々歳、ない場合は次のスポットに行くまでじっと待つしかない。それにVXだとスポットやトリックが映えるからVXで撮影できたのは大きな助けになったね。セクションを観てがっかりした人には4週間しかなかったからと言い訳するしかないかな。その場合はお金を返してもらってよ!

作品は主にロンドンで撮影されたけど、ここロンドンでの撮影で良いと思うところは何?

面白いスポットがたくさんあるのがいいよね。それにいつもみんなに温かく迎え入れてもらって、撮影だけじゃなくてただ一緒に滑りにいくような友達もたくさんいること。ロンドンは街並みも雰囲気も最高。でも物価は異常に高いよね。ここにいさせてもらえるだけでもてなしを受けているみたいだ。

以前に何年か住んでいたリヨンでも1週間、撮影していたよね。どうだった? 当時住んでいたときに滑っていたスポットとはまた違うところで撮影したりした?

リヨンでも旧市街とよばれるVieux Lyonに住んでいるLoic Benoitの家に泊めてもらっていたから僕が住んでいたところからは離れていてまるでちがう街に来たみたいだった。それにこの4年でスポット事情も随分と様変わりしていたよ。滑られるスポットもかなり増えたね。ひょっとすると僕の許容範囲が広がっただけかも知れないけれど。Greyの12号の表紙のスポットはすごいよ。あれだけのためにリヨンまで行ってもいいくらいだ。懐かしい友達に会えたのも良かった。ただ自分も成果をあげなきゃいけないし、NickやJakeを案内してあげたいし、さらに友達に会うというのはなかなか大変だった。あとフランス語を話せるのはやっぱりいいね。自分がスケート以外の時間でも本当は無能じゃないことを思い出せた感じ。普段は母国語を話しているわけじゃないから物事を理解するのに手こずったり時間がかかったりするだけなんだよ。あと、当時かなり衝動的にリヨンからベルリンに引っ越したから、今回戻るときにちょっと後ろめたい気持ちもあったんだよね。なんだか街を裏切ったくせにのこのこと戻ってくるような感覚というか...

Eleventh Hour - Nick Jensen and Sylvain Tognelli Trailer from Jacob Harris on Vimeo.

Jacob Harrisと撮影するのはどんな感じなの? 

Jakeはスケートを撮るよりも自分で滑る方が好きで、それがフィルマーとスケーターの関係に支障をきたすこともあるけれど、僕はそういうのってフィルマーにとっては良い資質になりえると思う。彼は誠実な心を持っていて長い議論をするのが好きだ。彼と一緒だと撮影だということを忘れてしまうことも多いね。
彼はよくカメラバッグに入れたものをなくしたり、壊したりするから現場に着いてとにかくどうにかして撮影が開始できればそれだけで僕らはいつも御の字だった。ガムテープであれこれ修理していたのが懐かしいね。いい思い出だよ。
そして彼は撮った映像に対してすごくはっきりとした意見を持つんだけど、同時にあまりにも長い時間考えすぎて最初は嫌いだったものを好きになり、最初に好きだったものを嫌いになっちゃうんだ。2月に彼の家に泊めてもらったときはほとんど毎日、撮影した素材をずっと、すべて、何度も観ていたよ。僕もだんだんと細かい箇所に目がいくようになって、いくつかの素材に思い入れが芽生えちゃって彼とその素材を作品に入れるべきか否かで議論をしたこともあった。良いビデオはこういうちょっといきすぎた細部へのこだわりと素直さのほどよいバランスから生まれてくるものさ。
彼のことを知らない人にはとにかくすごい「キャラ」だってことだけは教えておくよ。今ではすっかり友達になったけどね。もっと一緒に撮影したり一緒に過ごせたらいいのに。ベルリンに引っ越して来なよ、Jake!

スケート・ビデオについてどう思うか聞かせてもらえる? スケーターとしてはやっぱり欠かせない存在なのかな?

ビデオはスケートボーディングに文化的次元を与える存在だ。えてしてカルチャーが生み出す製品のうち多くのものは使い捨てにされるような時代だけど、スケート・ビデオの及ぼす影響は長い期間にわたって続く。ビデオの場合、スケーティングの質や編集のうまい下手よりも映像がその瞬間のフィーリングや場所、時代やなんかを捉えていることの方が重要だと思うんだ。だから小さなクルーだけで作ったビデオやショップ・ビデオが好きなんだよね。ま、そういう定義とは関係なく、いつだってひょんなところから真の芸術とよべるようなビデオ、アートとして扱われるべき作品が登場してくるけどね。

一番、影響を受けたビデオは何? 

Habitatの『Mosaic』かな。あの作品のおかげで今もこうしてスケートしている。


Switch bluntslide, Valencia. Photo Henry Kingsford

音楽はアーティストが決めた曲順通りにアルバム単位で聴かれるべきだという意見があるけど、スケートボーディングも同じようにフル・ビデオというフォーマットで表現されるべきだと思う?

そうだね。でも実はアルバムよりもやっぱりライブが一番だよね。スケートボーディングの場合もそうだと思う。たしかにうまく作られたフル・ビデオはスケートボーディングを体験する最高の方法のひとつだ。でも他の方法でもうまくやれるはずなんだよ:ウェブ上のちょっとしたクリップ、iPhoneで撮った写真、インスタグラムと方法はいろいろある。自分たちが愛しているものを表現できる新しい方法が出てきたならそれに対してオープンな姿勢をとってあげるべきだよ。「昔の方が良かった」と言うことは簡単さ。でもそれじゃ何も変わらないよ。

今作がリリース直前に音楽の著作権の問題でGreyのビデオからインディペンデントな作品に切り替わったことに関してはどう思う?

そうすることでより簡単に曲を選べて、使えるなら賛成だね。ミュージシャンだって良いビデオに使ってもらうことで得をすることもあるはず。お互い様なんだからあまり一方的にしめつけるのはどうかと思うよ。すぐに売り上げにつながらなくてもミュージシャンの才能を広める機会にはなるんじゃないかな。曲を気に入ればみんなそのアーティストの旧作にも興味を持つと思うよ。

作品は主にロンドンで、そしてリヨンや他にはベルリンやバレンシアで撮影されたわけだけど、それぞれの撮影場所は互いにどう作用していると思う?

路面が荒いし、スポットの構造もタイトだからロンドンの映像はやっぱり緊張感があるよね。だから路面もスムーズで開放的な雰囲気のリヨンやバレンシアのような街での、一息つけるような映像をはさみ込むのは良いバランスだと思う。ベルリンは僕が住んでいる街だからそこでも撮影したのは理にかなっているよね。

自分のパートで変えたいところはある? 

まだ完成したものを観ていないから答えるのは難しいけど、素材がもっと多く撮れていたら良かったんだろうなとは思う。

作品の中で一番好きなパートとその理由を教えて。

自分がみてきた範囲で判断するならTom Knoxだね。彼はこのパートにものすごい時間と努力を注いできたから完成品を観るのが本当に楽しみだよ。でも他のみんなもそれこそ美的なセンスといったレベルでもそれぞれにこだわりを持っているからそれらがどう混ざり合うのかが楽しみ。きっとすごく有機的(オーガニック)な感触になるよ。
http://www.greyskatemag.com/2013/09/sylvain-tognelli-interview/

「音楽はライブが一番。スケートボーディングもそうだ」「自分たちが愛しているものを表現できる新しい方法が出てきたならそれに対してオープンな姿勢をとってあげるべきだよ」といった言葉に現れているSylvainの聡明さと柔軟な姿勢はそのまま彼のストリート・スポットへの適応能力につながっている気がします。今後も続々と発表されるといういろんなパートやセクションが楽しみでなりません!

『Eleventh Hour』のDVDはヨーロッパ向けとなっているはずですのでおそらくPAL方式で日本の通常のプレイヤーでは再生できない可能性もありますがパソコンなどで視聴可能ですので興味を持たれた方は是非、Slam City SkatesやPalominoで通販してみて下さい! 他にも日本まで通販で送ってくれるショップや日本国内でも取り扱い予定のあるショップをご存知の方は是非教えてください。こちらのリストに加えさせていただきます。

http://www.slamcity.com/eleventh-hour-dvd.html
http://www.thepalomino.com/products-page/films/eleventh-hour/