luecke

夢見る文系スケートボーディング愛好家

Nick Jensen interview from Grey Skateboard Magazine

UKのスケート・ビデオ『Eleventh Hour』のDVD発売記念としてお届けしております、同じくUKのフリー・スケート・ジン&ウェブGreyによるインタビュー・シリーズの翻訳もいよいよ後半に突入。今のロンドン、もといUKを代表するスケーターの一人と言っても過言ではないでしょう、Nick Jensenです。Paul Shierと一緒に新たなカンパニー Isle(アイル)を立ち上げて力強い一歩を踏み出した彼の最新パートが今回の『Eleventh Hour』で観られるわけです!
DVD『Eleventh Hour』はただいま発売中ですが、インタビューは発売直前に発表されたものであるために現時点では表現に食い違いも生じています。あえて原文のままで翻訳を掲載しましたことをどうかご了承ください。


Nick Jensen interview
from
Grey Skateboard Magazine web
taken with permission
original interview by Henry Kingsford
translated by Katsushige Ichihashi(Luecke)
http://www.greyskatemag.com/2013/10/nick-jensen-interview-02/

Portrait Finn Andrés

Nick Jensenとはすでに7月に『Eleventh Hour』に関するインタビューを済ませていたが、こちらはより深く掘り下げたもので本来は『The Grey Video』のリリースに合わせたGreyの特別号のために作られたものだった。その企画は幻に終わったものの、とにかくOlly Toddが『Eleventh Hour』のパートはこれまでのNickのものでも最高傑作だと豪語するほどなのだ。Nickがこれまでに発表してきたパート群を考えるとその言葉の意味するところがいかにすごいかわかるだろう。Nick JensenはLakaiFourstarIsleSlam City Skatesのライダーである。

このプロジェクトに参加することになったいきさつは? この作品のフル・パートにとりかかる前に別のプロジェクトが進行していて、そっちは頓挫してしまったような記憶もあるけれど? 

このプロジェクトに向けてパートを撮影できたのは本当に嬉しかったよ。たしか最初にJacob(Harris)とラインとトリックをひとつずつ撮ったあとにMorph(Dane Crook)とBlueprintの新しいビデオに向けて撮影に入ったんだよ。でも『Fully Flared』と『Make Friends with the Colour Blue』でふたつのパートを同時に撮ることがどれほど大変か学んだからそのときもひとつの作品に専念しようと決めてBlueprintに集中したけれど、その内にすべてが失速していってね。だからGreyのビデオに自分の時間をすべて捧げることにした。ThunderのコマーシャルやPhil Evansの『Panoramic』シリーズといった小さなプロジェクトは例外的にやらせてもらったけどね。それまであまり一緒に滑ることがなかったスケーターもたくさんいたから『The Grey Video』に参加できてものすごく刺激とパワーをもらったよ。

Jacob Harrisと撮影するのはどんな感じなの?

どこからはじめるべきかな? 性格は断然ゆるめだよね。どれくらいゆるいかと言うとスポットで僕が彼のことをしばらく待っていなきゃいけなかったり、夜中の撮影に出掛けたのに電球を忘れてくるくらいにゆるい。でも彼の名誉のために言っておくけど、翌朝にはちゃんと起きてすぐに電球を買いにいくような男でもある。そして11個だかそれ以上あるVX用のバッテリーを常に充電していて、ほとんど1週間ぶっ通しで撮影していたとしても「疲れた」とか文句を言うこともない。そして彼のつつましい性格にさらに付け加えると彼はスケートボードに乗ると相当にやばい。たまに本当にすごいときがあって、彼が滑って僕が撮影した方がいいんじゃないかと思うほどさ。でも彼は撮影される側になることには興味がないみたいで、こっちがどんなトリックを試そうとも一番良いショットを押さえることを最優先させる。HDで飽和状態となった今のシーンでは絶滅寸前の珍しいタイプのフィルマーだよ。彼のこの新作はまさに最高のVX作品だ。あの(Dan)Mageeだってそう言ってるほどさ。

スケート・ビデオについてどう思うか聞かせてもらえる? スケーターとしてはやっぱり欠かせない存在なのかな?

ものすごく大事なものだったけれど、もはやそうでもなくなってしまったかな。昔はビデオを発表するのにインターネットのような仕組みがなかったからスケート・ショップに行ってテープを買うまではスケーターの映像を目にしたり、それについて情報を聞くことはなかったわけだよね。でも今では質の良いスケート映像に触れられる可能性がいくらでも溢れているからDVDやVHSのビデオ・テープをデッキに押し込む行為はすっかり時代遅れになってしまった。今はどれだけ作品がネット上にリークしてしまってもできるだけ平気なふりをして我慢するのが大事なんじゃないかとさえ思うよ。もちろん作品をDVDで持ているのはいいよね。実際に手にすることのできるものが存在するのはいつだって心地よい。

一番、影響を受けたビデオは何? 

『Mouse』だね。あれは本当に最高だった。いろんなスタイルの滑りとレッジでのテクニカルなトリックの組み合わせにやられて完全にスケートにのめり込んだよ。あの作品が出てからよくサウスバンクで滑っていたけど、あそこの白い花崗岩のレッジでみんなノーリー・クルックドグラインドしようと必死だったのを思い出す。

Switch backside 180, Valencia. Photo Henry Kingsford
音楽はアーティストが決めた曲順通りにアルバム単位で聴かれるべきだという意見があるけど、スケートボーディングも同じようにフル・ビデオというフォーマットで表現されるべきだと思う? 

必ずしもその様式で表現されるべきだとは思わないけれど、たしかにフル・ビデオはいいものだよね。長すぎないのが条件だけど。音楽の場合、アルバムは一人のアーティストや一組のグループの曲だけで構成されているけれどスケート・ビデオには複数のスケーターが登場するからある意味カクテルみたいなものだと思うんだ。音楽のアルバムのような連続性を生み出しつつ、各人のセクションを調和させすぎないという相対する行為のバランスをとるようなものだよね。『Photosynthesis』はかなりの成功例だと思う。

『Eleventh Hour』は当初の予定から大幅に違う作りになったよね。主に収録時間が長くなり、新しいライダーも加わってセクションが増えたわけだけど、そのことについてはどう思う? 

このプロジェクトが当初の計画にはなかった変化や発展を許容できたことは良いことだと思う。それを受け入れた君とJacobの功績だよ。おかげでこうしてChris Jonesのセクションもできたわけだし。

今作がリリース直前に音楽の著作権の問題でGreyのビデオからインディペンデントな作品に切り替わったことに関してはどう思う? 

君とJakeが撮影の間に起こった変化を受け入れてくれたのと同じ様に、インディペンデントに切り替えた決断を僕は支持するよ。編集も監督もJakeが担当しているわけだから作品の完成形に関してはすべての面で満足できる状態にさせてあげるべきだ。だから本当に使いたかった曲を使えずに妥協させたりしたら彼の努力からすべてを奪い去ってしまうことになってしまうよ。

作品は主にロンドンで、そしてリヨンや他にはベルリンやバレンシアで撮影されたわけだけど、それぞれの撮影場所は互いにどう作用していると思う?

場所の組み合わせはすごくうまくいったと思う。どの街にも誰かしらそこが出身地だったり、今も住んでいたりするスケーターがいたからね。滑りたいと思うスポットがすでに頭に入っていたから撮影も常に新鮮な気持ちで臨めた。チーム全員が同じスポットでそれぞれのトリックを撮影するだけのツアーには終わらなかったよ。それにリヨンもベルリンもGreyっぽい雰囲気を持っていたと思う。古い建物にどんよりとした雲、そしてたくさんのコンクリートバレンシアはそのくくりからはみ出しちゃっているけれど代わりに太陽の光をこの作品にもたらしてくれたね。

君は自分のビデオ・パートに関してかなり深く考察するよね。それぞれのパートにどこか関連したテーマもあったりすると思うんだけど、今回のパートはどう位置付けされるのかな? これまでのパートと比べてどう?

今回のパートはラインが基本になっている。新しいスポットを見つけて滑るのは楽しかったし、この作品の撮影は本当にただただ面白かったよ。まぁ、この冬は冗談抜きに寒くて雨や雪もひどかったから冬の撮影はちょっと大変だったけど。

自分のパートで変えたいところはある? 

もっとハンマー・トリックを入れたかったよ!

作品の中で一番好きなパートとその理由を教えて。

(Tom)Knoxだね。彼が滑っているところをみるのは回路のスイッチが入って電流が流れ込むのを目の当たりにするようなものさ。彼は滑りは今、何をやってもすべてが切れ目無くスムーズにつながっているように見える境地に達している。彼のパートは僕がこれまで観てきた中でも最高の部類に入るね。まさに才能溢れる、ひたむきでナーリーな男のポートレイトさ。それに映像からは彼がJakeとどれだけ仲が良いかも伝わってくる。それもパートがこれほど完成されたものになっている一因さ。
http://www.greyskatemag.com/2013/10/nick-jensen-interview-02/

このインタビュー・シリーズでは同じ質問から各人の考え方やスケートボーディングの捉え方を浮かび上がらせていますが、「一番、影響を受けたビデオは?」という問いはやはり面白いですね。あれこれ引っ張り出して観なおしてみたくなります。(ちなみに「もっとハンマー・トリックを入れたかった」という発言は彼なりのジョークだと思います。本気と茶目っ気の入り交じったジョークをあの顔で... )

『Eleventh Hour』のDVDはヨーロッパ向けとなっているはずですのでおそらくPAL方式で日本の通常のプレイヤーでは再生できない可能性もありますがパソコンなどで視聴可能ですので興味を持たれた方は是非、Slam City SkatesやPalominoで通販してみて下さい! 他にも日本まで通販で送ってくれるショップや日本国内でも取り扱い予定のあるショップをご存知の方は是非教えてください。こちらのリストに加えさせていただきます。
http://www.slamcity.com/eleventh-hour-dvd.html
http://www.thepalomino.com/products-page/films/eleventh-hour/