luecke

夢見る文系スケートボーディング愛好家

PONTUS ALV interview from "ANZEIGEBERLIN INFORMATION" issue #36

翻訳の許可を得るのにかなり時間がかかってしまいましたが、なんとかこのベルリンのスケート・ジンに掲載されたPontus Alvのインタビューをお届けてできて幸いです。彼が自ら立ち上げたスケート・カンパニー、POLAR SKATE CO.についてたっぷりと話してくれています!

Polar Skate Co.
A phone interview with Pontus Alv by Jan Kliewer.
Documentation by Nils Svensson / Alv.
Illustrations by Narancic / Alv
Translation by Katsushige Ichihashi(Luecke)
http://anzeigeberlin.de/magazine.html
taken from ANZEIGEBERLIN INFORMATION with permission
ポンタス、こうしてスケート・カンパニーを立ち上げることは君の長年の活動のすべてにさらなる大きな意味を与えることになると思うんだけど、なぜ「今」なの? ここまでくるのにこれだけ時間がかかったのはなぜ?

そうだね、何年もかかって、ようやくすべてがひとつになりつつある感じ。まず、僕は人生のあの時期にケリをつけるのに2つの作品を作る必要があった。この作品たちがこうして自分のスケート・カンパニーを立ち上げる基礎になってくれたようなものなんだ。作品が僕の立ち位置、僕の信ずるところ、そして僕がどういうタイプのスケートボーディングにのめり込んでいるのかを表現してくれている。

今のところ、チームには誰が入っているの?

まず僕と、コペンハーゲンのHjalte Halberg、あと『In Search of the Miraculous』でラスト・パートを飾ってくれたJohan Lino-Waad、そして最年少のDavid StenstromにJacob Ovgrenだよ。彼らがフルでPolarからサポートを受けることになるけど、チームに関してはよりすぐりのエリート・チームを作り上げるとか、かっちりと決めてるわけじゃないよ。お高くとまってみんなを見下ろすようなマネはしたくない。このチームでは世界中のスケーターと同じ地平に立っていたいんだ。たとえばビデオを作るとしたらこれまで通り、僕たちが出会う人たち、一緒に滑る人たち、みんなと取り組む出来事に関したものを作っていきたい。そういったことは絶対に変わらないから。僕の友達や他にも面白い人たち、ひょっとしたら面白くない人たちも作品の一部になってもらおうと思っている。そういったすべてを分け隔てるようなはっきりした線引きは存在しない。
あとPOLAR SKATE CO.には僕たちが取り込んでいるあらゆるもの、たとえばDIYスポット建設、映画製作、写真やアートなどのための社会的な、開かれた「場」になってもらいたいんだよね。僕たちの目標は人が自分をインスパイアするようにインスパイアさせることなんだ。

発表されているデッキのデザインは様々で、ひとつのスタイルに固執していないみたいだけど、どの方向性に対してもオープンな姿勢でいようとしているのかな?

うん、絵画もあればドローイングやイラストもあるし、いろいろだよね。でもその裏には共通したコンセプトを貫こうとはしているんだ。基本的にはアーティスティックでいようとしてる。とにかくアートっぽくね! でもそのとき、そのときの気分でやっているんだけど。きっちりとしたビジネス・プランやマーケティング・プランなんて存在しないし、僕たちはただできることをあれこれやっているだけだよ... 

はじめは答えの中で「僕」をたくさん使っていたけど、カンパニーの話になると「僕たち」と言っていたね。この「僕たち」というは誰のこと?

僕以外には幼なじみのStefan Narancicがいて、2人でデッキのグラフィックやアート関係を仕切ってる。でも他の人にも参加してもらおうと思ってるよ。たとえば、Stefan Marxとはすでに手描きのデッキのシリーズを作ったし。9枚のデッキを作って、ウェブが完成したらそれをe-bayで売るつもり(訳者注_すでに6月末に販売は終了)。Stefan Marxには時間さえとってもらえたらデッキの1枚や2枚、やってもらおうと思っているし、あとMark Gonzalesにも声をかけてみたけれど、彼には契約の制限があって残念ながらこっちは実現しそうにないんだよね。だから、まぁ僕とStefan Narancicが制作されるものを主に取り仕切ってるわけだけど、将来的には他のアーティストをゲストに迎えるとか、他のスケート・カンパニーとのコラボレーションもしていきたい。そのときはもちろんチームのみんなや友達にもプロジェクトに参加してもらうことになるよ。だっていずれ誰かをプロにするなら、プロ・モデルにはその人のアイディアや人格、ライフスタイルを反映させなきゃいけないと思っているからね。

流通面ではどこかにサポートしてもらえている? 制作面での自由を得るために、どうやって資金を捻出しているの?

いやいや、現段階ではすべて自分の懐から出してる。このパーティーは僕のおごりさ。『In Search of the Miraculous』ですこしばかり稼げたから、思い切ってそれを全額POLARに投資しちゃって、何が起こるのか見てみようじゃないか、とちょっとやけっぱちな感じではじめてみたんだ。正直よく分からない。デッキを作るカンパニーを立ち上げればいろいろと面白いことができるけど、デッキを売ったところで大して儲けなんて出ないんだよね... デッキ1枚あたりの利益なんて本当にわずかなものだからさ。CLEPTOMANICXにはウェア関係で手伝ってもらえることになったけど... でも僕たちは欲やお金のためにやっているわけじゃないんだ。そんなものが動機になったことは一度もないからね。そりゃ商売にはいつだってビジネス的な面がついて回るし、誰だってお金を失うようなことはしたくない。でもスケート・カンパニーをやりたいと思う気持ちはあくまでも僕たちのスケートボード・カルチャーに対する愛と情熱から生まれている。ただその文化から恩恵を受けるんじゃなくて、誰かをインスパイアして、そこに恩返しをしたい。「Skateboarding will always be beautiful(スケートボーディングはいつだって美しい)」さ。


そうだね、それこそみんなが求めているものかも!

CLICHEを辞めて以来、僕はスケートボーディングが向かっていった方向とは別の道を作るために戦い続けてきた。スケートボーディングが向かっていった先には賛成できなかったから。すべてが大企業に占領されていって。小さなカンパニーはより大きな企業を通してしか存在できない状況とかさ。でもさ、たとえば君たちベルリンのシーンをみてごらんよ。みんなでマルメにきて、僕たちのスポットを体験して、ビデオを見て、「くそ、俺たちもやってやろうじゃねえか!」って思ったわけだろ? そうやって今やベルリンもすごいことになってるじゃないか! そういうことがヨーロッパ中に起こったんだよ。いろんなスケーターが僕たちがマルメでやってきたことにインスパイアされ、ビデオでやり方をおぼえたんだよ。「みんなで集まれば何かことを起こせる」という風に思ってくれたわけで、そこから生まれた様々なシーンを見てよ! 素晴らしいことだと思うし、僕にとってはスケーターたちが自分でスポットを作ったり、何か新しいものを生み出して自分たちの街のシーンを強いものにしていってくれたりするのを見るのが最高に光栄で嬉しいことなんだ。それこそが僕や僕たちがスケートボーディングに最大限に貢献できることじゃないかな。自分のやったことが他のスケーターをインスパイアして、彼らを取り巻く状況を改善していく気にさせることができるだなんてすごいことだよ。POLAR SKATE CO.でもそういうことをやり続けたい。「by skaters forever(永遠にスケーターの手で)」って感じでね。


このカンパニーの名前の由来は? スカンジナビアが北極に近いから? それとも君の両極端な性格から?

まず、名前はスウェーデン北ヨーロッパの厳しい冬を反映したものにしたくて。外は長い間ずっと極寒で、まるで北極に住んでる気分だったからさ! そこからStefanと2人でこの名前を思いついたんだけど、さらに極の両端、南北とかプラスとマイナス、2つの極や二面性、白/黒とかハッピー/アンハッピーなものごとの間に発生するテンションなどにアイディアが広がっていったんだ。生きることを理解するには死が必要だろう? 人は死ぬからこそ自分の人生を生きる動機を得るわけだし、両極が生み出すテンションこそがそのためのエネルギーを与えてくれるんだよ。僕にとって、そのエネルギーはスケートボーディングだからこの名前にいきついた。名前を決めるのはいつも大変だよね。この名前を決めるのにかかった時間は聞くのもいやになるくらい長いものだったよ。でも決まった今は最高にハッピーだ。名前が決まって、ロゴもできて、デッキも何枚かできたし、方向性もなんとなく決まってきたからこれから先がもう楽しみで仕方ない。僕たちは好きなものしか作らないし、情熱をもって、楽しみながらやっていくつもり。自分たちのやっていることを信じているし、みんなにとってもPOLARがただのくそビジネスには見えないことを祈っている。POLARはちゃんと感情のこもった人たちで運営された、本物の思想と内容と深みをもった存在なんだ。ただ利益を生むためのグラフィックなんかじゃないことをわかってもらえたら嬉しい...

http://www.polarskateco.com/

5月に登場した7枚のデッキに続いて、7月には新たに4種類のデッキも登場し、さらにステッカー、ポストカード、Tシャツと精力的にコレクションを増やし続けているPOLAR SKATE CO.。先日にはさらに『In Search of the Miraculous』にも素晴らしいパートを残したポーランド人のMichal JurasもPOLARチームに加わわり、また厳しい冬を迎える前にスケート・シーズンを謳歌し、次なる映像作品に向かって突進しているようです。日本でもPOLARを流通させるべく画策中とのこと。もしも現在候補にあがっている代理店に決定した場合、ちょっとショックを受ける人も出るかも知れませんが、その時は僕が事情を理解している範囲内でフォローできれば、と思っております。
商品を流通にのせることはPontus本人の手元に残る利益は本当にわずかなものにしかならないことを意味します。やはり送料がバカになりません。本人からスケーターまで、一度の輸送で済む場合と、スウェーデンから日本の卸屋、卸屋から小売店と段階がひとつ増えるだけで販売価格に占める送料の割合は上がってしまいます。ヨーロッパで流通にのせる際、デッキ1枚あたり5ユーロの利益が手元に残れば良い方だと言ってました。ぎりぎりで売値の10%でしょうか。で、日本で商品が流通される際の代理店(卸屋)や小売店の取り分は何%なのか、スケート業界の実情は存じ上げませんが、10%以下のわけはないだろう、というのが違う業種ながらも小売業にいたことのある自分の判断するところです。
それでも流通に乗せて、自分の作品を世に広めたい、日本のファンにも届けたいと思っているその心意気を是非、感じとってあげて下さい。あとは忙しい本人の手を煩わせるのも悪いのですが、直接通販してあげるのもサポートになると思います(ペイパルや言葉の壁があって手を出せない方もいらっしゃるかもしれませんが... 質問や協力できそうなことがあれば遠慮なく連絡下さい)。
http://insearchofthemiraculous.se/blog/