luecke

夢見る文系スケートボーディング愛好家

Dane Brady interviewed by Pontus Alv - from SOLO skateboard magazine

今回のビデオ『I like it here inside my mind, don’t wake me this time』の中でもっともPontus Alvの映像作品らしい、あるいは1作目と2作目の流れにあるエモーショナルかつ詩的なテイストをがつめこまれたのがDane Bradyのパートだったのではないでしょうか。オールド・スクールに属するようなトリックに新たな命を吹き込み、どの街にもありそうな身近なスポットで縦横無尽に繰り出す彼の滑りは見ていて楽しいし、なんか自分もまねしたくなるものばかり(実際にはものすごくむずかしいのですが...)。そして世の中の流れからはずれた密室芸のようなスタイルをもつDaneがスケートボーディングの聖地のひとつ、ポートランドの出身だとこのインタビューで知ったときの驚きと言ったら...

DVDがリリースされたいま、改めて楽しめるインタビューではないかと思い掲載の許可を得て翻訳させてもらいました。Pontus AlvによるDane Bradyインタビュー、お楽しみください。

Home Alone
- Pontus Alv
interviews Dane Brady

from SOLO skateboard magazine

taken with permission

original interview by Pontus Alv

introduction by Fabian Fuchs

skate photos by Nils Svensson

sideshots by Fabian Fuchs

translated by Katsushige Ichihashi(Luecke)

http://soloskatemag.com/home-alone-pontus-alv-interviews-dane-brady/?lang=en

Daneとの出会いはPontusが見せてくれたPOLARの新作ビデオ用に編集したラフ・カットだった。このパートはまさしくDaneそのものだったため、実際に彼に会ったときはデジャヴとしか思えなかった。Daneはこの夏(2015年)、マルメのヴァイヴを味わったり、Pontusや他のライダーたちとすごしたり、もう何個かトリックを撮影してみたりして自分がどこまでやれるか試してみるために片道切符ひとつでマルメに来てくれた。しかしいまでもDane Bradyとは一体何者なのか、正直、僕にはよくわからない。Daneは寡黙だ。でも、もし彼が口を開いたならよく聞いた方がいい。きっとまだ誰も見たことがないスポットで彼がやってみたいトリックについての話だから。そしてDaneはそれをものにしてしまうだろう。僕からみたイメージはまさに一匹狼。もしDaneが150年前に生まれていたらきっと馬にのってスポットを探しまわるカウボーイだったにちがいない、なんて思う。(序文:Fabian Fuchs)

__Dane、出身はどこ?

オレゴン州ポートランドだよ。

__いまちょうど君のビデオ・パートを編集しているところだけど、せっかくのチャンスだからいろいろと聞かせてよ。まずは最近、21歳になったけどもうニセモノの身分証明を使わなくてもよくなってせいせいしてる? 

そうでもないかな。不便だったのは年上のひとたちと一緒にいるときだけだったから。

__でも持ってたんでしょ? ニセID。

まぁ、持ってたけど、使うのは好きじゃなかったなぁ。使ったのも1回か2回くらいだよ。18、19になればニセIDを持つのが当たり前なだけで。

__何歳のときにスケートボーディングに出会ったの?

高校生になる頃。高校入学直前の夏(アメリカは9月が年度スタート)だったと思う。それまでロングボードを持ってて、坂を滑り降りたりする程度だったけど、その頃に友達がスケートボードを僕の家に置いていっちゃったんだ。それを乗るようになって、友達もそのボードのことをすっかり忘れちゃったからそのままボロボロになるまで乗り潰した。かなり気持ちよかった。

__どんなデッキだったの?

誰が運営していたのかは知らないけど、M&Mという無名ブランド。

__じゃあ最初に自分で買ったデッキは何?

おぼえてないなぁ。でもある日、ずっと乗り続けたボロボロの古いデッキでスケートパークに行ったときに知らないひとに「このデッキに試しに乗ってみる?」と声をかけられて。ちょっと気持ち悪いなぁと思いながらも乗ってみたら「欲しかったらあげるよ。俺は地元に帰らなきゃいけないけどそのデッキを持って帰れないから置いていくつもりだったんだ」と言ってくれてことがあったよ。なんか気味が悪かったけど「まぁいいか」ともらうことにした。BIRDHOUSEのTony Hawkモデルで大きなHawkドクロのグラフィックでインディーのトラックにバカデカいウィールが付いてた。


             No-Comply Polejam

__当時、好きだったスケーターは誰?

Mike CarrollとEMB(サンフランシスコの歴史的なスケート・スポット、エンバーカデロ)周辺のシーンにハマってたね。当時は最高にクールだと思ってたし、いまもまた改めてチェックしてる。最近はNatas(Kaupas)、Tom Knoxや(Sean)Sheffeyをよく見てる。当時から一日中YouTubeを見てた。好きなものがすぐに変わっちゃうからひとつのものを見続けるというより、なんでもランダムに見る感じだったかな。当時、まわりのみんなはチームに所属するような普通のスポーツをするひとばかりで、スケーターは僕ひとりだったからYouTubeしかなかったんだよね。

__一匹狼だったんだ。

そう、家の前とか自分で見つけたちょっとしたスポットで滑ってた。ところがある日、友達からインドアのスケートパークがあることを聞いたんだ。Department of Skateboardingという名前のパークで、初めて行ったときはデッキにクルーズ用のウィールを付けてたくらいで僕は何もわかってなかったけどその場のヴァイヴをすっかり気に入っちゃって、とにかく通い続けた。いまでもつきあいが続いている知り合いとはみんなそこで出会った。居心地がいいと思ったその日から毎日通い続けたよ。

__そのパークはまだあるの?

いや、もうなくなった。隣にCal’s Pharmacy Skateshopがあって、その店も場所は変わったけど、いまそこで働いてるんだ。

__そこで働くようになったきっかけは?

何年間も通い続けて店のひとと仲良くなって、パークが閉まるときのラスト・セッションにもみんなで参加した。でも、店の方も数ヶ月後に閉まっちゃって。なんか当時は不思議な時期でみんな互いにあまり話すことなくバラバラに動いていて、僕もニューヨークに行ったけどうまくいかなくて。店のひとからもう一度スケートショップをやろうとしてる話を聞いて、ニューヨークでも行きづまってたからそこで働かせてもらえないかどうかお願いしてみたんだ。

__ニューヨークに移り住もうとしてたなんて知らなかった。いつ頃の話?

18の頃。でも1、2ヶ月で地元に戻っちゃった。とにかくうまくいかなかった。学校を辞めて16歳から働いてたから貯金があったし、大学に進学する友達をみて自分もとにかく街を出たいと思って。


               Tailslide

__なぜニューヨークがいいと思ったの?

スケーターとして行きたかったわけじゃなくて、ただ興味のある街で他にもそこに引っ越したひとを知ってたから行ってみたいと思ったんだ。

__ポートランドという街はやっぱり大事な存在? 僕から見ると地元とのつながりがすごくあるように思えるけど。僕もどこに行こうが、すぐにマルメに帰ってきたくなっちゃうような人間で。

僕もここが居心地いいと思っちゃう。とくにスケートボードのために他の土地に行くのがどうもだめなんだよね。だっていままでここで全部うまくいってるし。みんなでいろんなスポットを探しまわってきたから地元のひともスポットも知り尽くしてる。いまなら行きたいところに自由に行ける。

__Kevin(Rodrigues)とパリの関係性にちかいね。街を知り尽くしてるからトリックを思いついたときにどこでそれをできるかわかるんだよね。

どんな場所でも自分の思い通りにスケートできるひともいるけど、気持ちよくスケートするためにはスポットの場所が重要な要素になるひともいると思う。僕はいつだって自分がどこにいるのか意識せずにはいられない。それに僕にとってはスポットが家の横や日常の生活圏にある方がぐっとくるんだよね。


             50-50 Hippie Jump

__毎日通るような場所に「いつかあのレールでレール・スライドをかましてみたい、あの壁をウォールライドしてみたい」と思わされるようなスポットがあったりするとたまらないよね。僕の『In Search of the Miraculous』のパートのラスト・トリック、あのボードスライドしたハバ(Hubba)はそれこそ10歳の頃から見続けてきたスポットだったんだ。ポートランドにもそういうスポットがある? 

友達と一緒に、いつかここで誰かが何かやるのかな、なんて言ってる場所が何箇所かあるね。かなりの度胸が必要になると思うけど。僕も何箇所か、いつか勇気が出たらトライしたいと思ってるスポットがある。たとえば25段のまがった階段に付いたキンク・レールがあって、もう何年もあれこれ想像してるよ...

__そしてある時期からTom(Bender)と一緒に撮影するようになったんだよね。ちょっとこっちの話になっちゃうけど、DaneがPOLARに加入した経緯が本当に不思議で。ある日、Waylon(Bone)がYouTubeのリンクを教えてくれたからてっきり2人が知り合いだと思ってたけど、実際はそうじゃなかったんだよね?

Aaron(Herrington)に会ったことはあったけど、Waylonのことは知らなかったよ...

__あれはスポンサー・ミー・テープを作るためにいい素材を撮りためようとしてたの? 

いや、あれはスポンサー・ミー・テープでもなんでもなくて、ただTomとよく撮影してて、彼が勝手に自分のプライベートなYouTubeアカウントにあげちゃったフッテージだった。特に目的があったわけじゃないと思うよ。ニューヨークの友達にリンクを送ったらその友達がWaylonと知り合いで、そこからPontusまでいったのかな。でもどこかのカンパニーに自分を売り込むために作ったものじゃなかったよ。

__そこからどうやって連絡をとったのか忘れちゃったね。ただDaneのフッテージがすごく面白かったことはおぼえてる。誰にも似てないアプローチで、それこそ僕は探し求めていたものだった。当時のことおぼえてる?

たしかメールで連絡を取り合うようになって、そのあとはSkypeでよく話した。Transworldが僕の記事と一緒にオンラインで公開できるようなクリップを作りたがってるからそのフッテージを他で使わないようにした方がいいよ、と言ってくれてたよね。Pontusにフッテージを他で使うのを止められた、と言ったらTomたちが怒ってたよ。でもそんなことを言われて嬉しかった。その後にロスで実際に会ったよね。


          Dane films Pontus’ No-Comply

__あぁ、一緒に消火栓でスケートしたっけ。そして数日間、一緒についてきてくれたんだよね。旅行気分でわいわいやって、Neil Blenderにも会った。あれは伝説的な瞬間だった。あのときの話をちょっとしてくれる?

最高にエピックな瞬間だったね。Tom(Remillard)に会いに行ったらNeilがTomの家のすぐ近くに住んでいたことがわかって、とにかく行ってみよう、となったんだよね。家を見れるだけでもいいか、なんて言ってたけど、最高だった。

__(笑) いやいや、ちょっと恥ずかしいけどNeil Blenderのことになるとただのファンに戻っちゃう。そういえばTomとは古いつきあいで、僕がARCADEのライダーだった頃にTomはよくサンディエゴの僕の家に来てたんだよね。いつも古いデッキをあげてたんだ。そしてある日、「Yo、Tomだよ、おぼえてる? あの頃いっぱいデッキをくれてありがとう、いつも遊びに行かせてもらってたよね?」とベルリンでANTI HEROのライダーになっていた彼に再会した。話は戻って、初めて公式にPOLARのメンバーとして参加してもらったのが『Manhattan Days』だったよね。あれも偶然Daneがニューヨークにいたから参加してもらったっけ。そのままUKツアーにも同行してくれてチームのメンバーみんなに会ったんだよね。

そこまでたどり着くのに1年半くらいかかった。実現したのが不思議な一方、ずっとこのチームに入りたかったし、なるべくしてこうなった気もする。いまでもちょっとびっくりだけど、これ以上最高なことはないよ。

__最近、3ヶ月ほどマルメとコペンハーゲンですごしたし、UKやフランスにも行ったことがあるよね。ヨーロッパとアメリカのちがいってある?

スケートに関してはマルメとポートランドには共通点が多い。タフなスポットとか工場の多い区域とか。でも人間性をみるとヨーロッパのひとたちの方がおおらかかな。アメリカ人の方が意味もなくカリカリしてると思う。ストレスにやられてて、交通状況とかどうでもいいことにいつも怒ってる... あと、ひょっとしたらまちがってるかもしれないけど、食べ物に関して思ったのがヨーロッパの方が食事のときに出される量が少なめだと思った。それはこっちに来るとすぐに気付くね...

__前に最近は古いビデオをたくさん見てるって言ってたけど、古いビデオのどういうところが好きなの? 

当時の滑り方が最高なんだよ。トリックの種類だけじゃなくて、どうやってそのトリックをやるか、そのスタイルとか、ラインの流れとか、すべてがやばい。80年代のスケーターのスラッピーとか最高にかっこいい。もうあんな風にやってのけるひとはいないんじゃない?

__新しいものでいいと思うものもある? 

いまは発表されるものが多すぎて自分の好きなものを見つけることすらできないよ。Kevinがパリで仲間たちとやってることはやばいけどね。あのシーンは本当にやばい。あそこまでクルーたちがまとまってるシーンはいまどき珍しいんじゃない? 

__でもひとりでインスタグラムでクリップを量産するDaneのスタイルもやばいよ。あえてラインじゃなくて細かく編集してトリックを見せる手法がいいね。どうやってあの手法が生まれたの? 

インスタグラムの規定の秒数にどこまでつめこめるか挑戦してみるのが面白いかなと思って。自分で見ても楽しめて、他のひとがスケートしたくようなものをサクッと作ってみようと思った。普通の撮影とちがって、携帯電話で撮るならそこまでシリアスに考えなくてもいいかな、という気にもなれるし。今はそのシリアスにならなくていい、ただ楽しめばいいという側面が一番重要かな。

__それこそがスケートボーディングの原点だよね。ストリートで楽しく遊ぶためのおもちゃなんだから。最近のスケートボーディングはシリアスすぎると思う?

たまにいきすぎることがあるよね...

何か締めの言葉はある? 

POLARと地元ポートランドのみんなにありがとうを言いたい。みんなのおかげで最近はものすごく楽しいよ!

http://soloskatemag.com/home-alone-pontus-alv-interviews-dane-brady/?lang=en