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夢見る文系スケートボーディング愛好家

An Interview with the Director of Format Perspective – Phillip Evans. - from Fuckn Filthy Web

もうひとつ、作品の製作秘話もきける興味深いインタビューがありましたので、翻訳〜当ブログへの掲載の許可を頂き、投稿させてもらいました。本編にリンクされている映像や写真はすべてフィル・エヴァンスのサイトでも見られますのであえて割愛させてもらいました。是非、http://www.formatperspective.com/ にてご堪能ください。

Original Interview by Joshua Gordon
taken from Fuckn Filthy Web with permission
Translated by Katsushige Ichihashi(LUECKE)
http://fucknfilthy.com/2011/06/12/an-interview-with-the-director-of-format-perspective-phillip-evans/
最近、みんなが話題にあげている『Format Perspective』。6人の素晴らしいスケート・フォトグラファーの持論と人生をテーマとしたこの映画は全編スーパー8で撮影され、その映像は美しく、フォトグラファーたちへのインタビューは感動の一言に尽きる。今回、その監督であるアイルランド人のフィリップ・エヴァンスにちょっとしたインタビューをする機会を得られた。
1. では、名前と職業を。
名前はフィリップ・エヴァンス。ブレイ(アイルランド)の出身で、スケートボーディングに関する映画を撮ったり、機会があれば自分で絵を描いて展覧会なんかを開いたりもするよ。
2.『Format Perspective』について簡単に紹介してください。
この作品は半分ドキュメンタリーで、半分スケート・フィルム。ヨーロッパのスケート・フォトグラファー6人に焦点をあてていて、なぜ彼らがそうやってスケートボーディングを撮っているのか、作品をどういう風に撮りたいと思っているのか、そして何が彼らの作品に影響を与えているのかを見つめているんだ。そして彼らが写真に収めているスケートボーディングの滑りを映像(動画)としてもスーパー8で、ちゃんと音声も含めて収録している。
3. この映画を撮ろうと決意したきっかけは?
前作の『The Scrum Tilly Lush』を作り終えたあと、スケートボーディングを撮ることにちょっと違和感を持ってしまったんだよね。ちょうどその時に撮ろうとしていたスケーターが厄介な相手で、撮影やスケート・セッションでは落ち込むことも多くて。たとえシリアスな撮影であっても、スケートボーディングって楽しいものであるべきだと思うんだけど、撮影の義務感をストレスに感じる人もいるんだよね。まぁ、とにかくスケートボーディングを撮ることに対する僕の情熱は一度、完全に打ち消されてしまったんだけど、ある時、友達のスケート・フォトグラファーのスチュ・ロビンソンがそういうストレスなんてものともせずにいい写真を撮っているのをみてね。そこで彼が写真を撮影する様子を撮ることにしたんだ。半分ジョークみたいな感じでやりはじめたんだけど、彼の写真と、それが撮られた状況の映像を組み合わせるアイディアを思いついて、一気にまたやる気に火がついた! 僕のアイディアをどう思う?ときいたら了解してくれて。一度、そこで本作の試作品にあたるようなものを作ったんだけど、そこから雪だるま式にプロジェクトが動き出したんだ。
4. 撮影でバルセロナ、マルメ、ベルファストと世界中を回ることになりましたが、その中でも特に印象深かった場所はどこでしょう?
どの場所にもそれぞれの良さがあったけど、その中でも東京とベルファストはどちらもその場所ならでは個性で突出していたと思う。まず東京はもう街の規模からして途方もなかったし、はじめての日本だったからその文化にもやられてね。会うひと会うひとがみんな信じられないくらいに親切で、謙虚で、優しくて、僕たちを東京に招待してくれたスタッフの献身ぶりといったらもう申し訳なくなるほどだった! 食べ物も最高だったし、いろいろと試しすぎて食中毒になっちゃったくらいだけど、その価値は十分にあったよ! そしてベルファストのユニークさは作品でもうまく捉えられていると思う。これまで何千回と訪れていた場所ではあるんだけど、何度行っても毎回衝撃なんだよ! ブレー出身の僕でもあそこまでヤバいものはさすがに目にすることはあまりないね! そういうヤバい状況に慣れちゃってて、普通にやりすごしてるベルファストのローカルなスケーターたちと、構わずにやりたいことをやり続けているその姿勢は僕にとって一番大きなインスピレーションになった気がするよ。
5. 撮影中に何か面白い事件はおきましたか?
うん、やっぱりベルファストだね! スチュがキッズが滑っているところを撮りたかった場所が北アイルランドでも割と過激なユニオニストがたくさん住んでいた地域で、彼の車に乗せられて行ってみるとそのスポットてのが出入り口がひとつしかない建物の奥の方にある錆ついたハンドレールで、その回りの建物もすべての戸や窓がベニヤ板で塞がれているような廃墟ばかり。ユニオニストの縄張りだったから南アイルランド訛りの僕はスポットをチェックしにいった間は一言もしゃべらないようにしていた。帰り道の途中で車が一台、道をふさぐように止まっていて、もしかしてそこで地元の連中に呼び止められるんじゃないかと焦ったよ。一言でも僕の南部訛りがばれたりしたらタダじゃ済まないからね! スチュが撮影のためにもう一度、スケーターを連れてそのスポットに戻りたがっていたのはわかっていたけど、びびって何となく先送りにしていたんだ。でも、映画にとってはこれ以上ないくらいの題材だったからやるしかない!と思って。 スケートボーディングとその回りのゲットーという、1枚の写真に収められるべき、まさにスチュのパートにお似合いの完璧なシチュエーション! だから撮影に行く前に、「フィル・アルヴ(自分の名前Phil Evansにスウェーデン人スケーターPontus Alvの名字を合体させた)」という名前のスウェーデン人ドキュメンタリー映像作家、なんて架空のキャラクターをでっち上げて、自分がベルファストにスケートボーディングの撮影をしに来ているという設定でいくことにした。スウェーデンならあの過激な地域でもなんとか中立な立場でいられるんじゃないかと思って! まぁ、なんとかデニス・リンがそのハンドレールで滑る写真を撮影できて、そのときに僕が最低で最高のスウェーデン訛りでデニスに(トリックが成功して)おめでとうを言ったんだけど、あの日の音声テイクをあとから聴いたらもう本当にイカレれてて(笑) でもあの場所から無事に帰ってこれてよかったよ。ちゃんと撮影ができたのもよかったけどさ!
6. やはりスケートボーディングとスケート写真には常に惹き付けられてきたのですか?
スケートしはじめて15年になるけど、未だに愛してる。ブレイみたいな小さな街で滑りはじめたときは回りに誰もやってる人がいなくて、初めて他の人がスケートしてる姿を見たのは、ある日イーソンにバスケットボール雑誌を買いに行ったときに見つけた「Transworld Skateboarding」誌でだったんだ! 衝撃だったよ! そこに載っていたトリックのやり方なんて全然分からなかったけど、その新たに出会ったまさに情熱とよべるスケートボーディングについてできるだけたくさん学びたいと思った。そこからはじまって、15年間、主に雑誌を通してスケート写真に触れてきたわけだけど、僕自身はこの素晴らしい写真の世界に参加することはないままできちゃったかな。僕が撮る写真は素人並なんだよ!
7. あなたに映画を撮らせるインスピレーションの源となるのはどんな人たちでしょうか?
一緒に滑っていて楽しい人、撮影するのが楽しい人なら誰でも。スケートの撮影がプロフェッショナルな映画撮影みたいな雰囲気になるのは好きじゃないんだ。人がちゃんと技術を駆使して思い通りに作品を作り上げることができる、というのは素晴らしいことだと思うけど、あまりにも分析的になるとちょっと魂が抜けちゃう気がするんだよね。だから面白くて、HDで撮った激スローモーションとかは入っていないような作品を見るのが好きかな! ANTI HEROやVANSの映像などをたくさん手がけているリックとバディ(Rick CharnoskiとBuddy Nichols)はいつもいい作品を作ってるよね!
8. 一番好きなスケート・フォトグラファーと言えば誰になりますか?
スチュ・ロビンソンだね! わかってる、わかってる、完全な身内贔屓で、彼は作品にも登場するわけだけど、僕は彼がベルファストでスケートボーディングに対して貫いてきた姿勢がこの映画を撮る前から大好きだったんだ。彼は誰のマネもしないし、いつも写真の構図がまわりの風景もたっぷり盛り込むようなことが多くて、ベルファストだといい意味でうらぶれてて最高なんだよね... あと、僕は実際に作品を生み出した本人に会えたあとの方がさらに作品に感銘を受けることに気付いたんだ。作品の裏にある物語を知ることで僕はより豊かに作品を体験できる気がする!
9. あなたが推薦する2011年、もっとも注目すべきスケーターは?
デニス・リンだね。ベルファストのスケーターで急上昇中の生意気なガキなんだけど、超ナチュラルなスタイルで滑りは速いし、本当にうまいんだ!
10. 最後になにか一言、あるいは誰かにメッセージはありますか? 
まずは業務連絡:『Format Perspective』DVDと本の予約販売を僕のウェブではじめたのでよろしく。あとは本作で僕のゲットーな機材なんかで撮らせてもらうチャンスを与えてくれたすべてのフォトグラファーとスケーターのみんなに感謝を! そしてカーハートからの多大な応援と尽力にもお礼を。ヒューマン・ピラミッズ・アーティスト・コレクティヴの連中にはビッグ・ウィリー的なスタイルでYoと言いたいし、ブレイのみんなにもハローって言いたいね!
登場する人が全員すばらしくて、本当にこの映画の公開が待ちきれません。本作に登場するフォトグラファーの作品や映画に関するさらに詳しい情報は是非こちらでチェックしてみて下さい。

(photo: Ryan Leathem)
http://www.formatperspective.com/