luecke

夢見る文系スケートボーディング愛好家

FLORIAN SCHNEIDER interview from Gnartifact

様々なスケート・ビデオのウェブ・アーカイヴ化をもくろむアメリカのサイトGnartifact( http://gnartifact.com/ )にて公開されたドイツ人フィルマー、Florian Schneider(フローリアン・シュナイダー)のインタビューの和訳となります。スケートボーディングとアートの関係をそれぞれ独自の方法で体現する4人、Pontus Alv、Adam Sello(ベルリンのスケート・ジン Anzeigeberlin Informationの編集長でもあるフォトグラファー)、Stefan MarxとBobby Puleoに焦点をあてたドキュメンタリー映画『Pushed』を遂に完成させ、目下ヨーロッパ各地で上映会を敢行中。待望のDVD化にはまだ時間がかかりそうですが、なんとしてでも観てみたい作品! ひとまずはインタビューだけでも...

http://gnartifact.com/features/pushed-florian-schneider-interview
FLORIAN SCHNEIDER interview taken from Gnartifact with permission
Original Interview by Nick Wnorowski
Translated by Katsushige Ichihashi(Luecke)
ドイツ中央の小さな街ケッセルの出身、そこで主に映画に関するビジュアル・コミュニケーションを専攻していたが、現在はハンブルグに住み、そこを拠点に活動する27歳のフローリアン・シュナイダー。ハンブルグのスクール・オブ・ファイン・アーツで学ぶ学生でもある彼に、製作したばかりのドキュメンタリー映画のプロジェクト『Pushed』についてインタビューをさせてもらった。

"Pushed" Trailer from Flo Schneider on Vimeo.

__『Pushed』のような作品を作ろうと思いたったきっかけは何でしたか?

『Pushed』は元々『We Love You』というタイトルだったんだけど、もうかれこれ6年ほどあたためていた、スケートボーディングに関する映画を作ってみたいというシンプルなアイディアからはじまった。いくつか短編映画を作ったあとに、じゃあスケートボーディングに関する映画で一体何を表現したいのか、きちんと集中して考えてみた。僕が映画の道に進んだのはやっぱり自分がスケーターだったからなんだよ。友達がスケートしてる映像を編集したのが映像作家としてのはじまりだったから。だからスケートボーディングから表現の源を得つつ、同時にその表現やアートもスケートボーディングを通して成立させているような人って誰だろう?と思いつつ、3分くらいでそういう人たちをリストに挙げてみた。そして結果的にはその全員がこの映画に出てくれたんだ。

__この映画を通して何を見せたかったのでしょうか?

最初、みんなに見せようとしていたものは実は大間違いだった。僕はさもスケートボーディングがクリエイティヴな存在で、スケーターなら誰だってアートの分野でも活躍できる可能性を秘めている、なんていう風に見せようとしていたんだけど、そんなの嘘もいいとこだよね。そんな作品にしちゃっていたら批評性のかけらもないような、ドキュメンタリーでもなんでもない安っぽい宣伝パンフレットやCMみたいになってしまっていただろうね。幸運にも、僕は実際にこの作品に登場する人たちに会って撮影する中でそれぞれの非常に興味深い人間性に触れることができ、彼らも僕にすごくオープンに接してくれたおかげで本当に互いを知り合うことができて、彼らが抱える矛盾や問題、気質やそれこそ機嫌の善し悪しまでわかる間柄になれた。そうやって僕は彼らが直面していた年齢、お金、業界、DIYカルチャーにまつわる三十路の悲哀ともよべるあがきとスケートボーディングとよばれるこのサブカルチャーにたずさわることができる喜びに目をむけることができたんだ。

__なぜスケートボーディングにとってドキュメンタリーはこれほど重要なものなのでしょうか? 

正直、僕にはスケートボーディングにとってドキュメンタリー映画が重要なものなのかどうかはわからない。そんなの僕が決めることじゃないよ。唯一、言えることはスケートボーディングやその周辺にあるサブカルチャーはものすごく進歩的であると同時にすごくひとりよがりで閉鎖的、自己完結的な側面を合わせ持っているということだね。でもその矛盾こそが特定の分野、登場人物、進化の過程やトレンドの移り変わりなどに焦点をあててみることに面白みをあたえ、それを捉える手段としてドキュメンタリー映画は非常に役立つ。作品をうまく完成させられたらそれは間違いなくスケートボーディングにとって大事な存在となり得るだろう。でも下手するとただのイメージ映像になってしまう危険性もある。ほとんどのスケート関係のビデオはその部類に入ってしまっていると思うよ。どこにでもあるようなドキュメンタリー作品。でも、待てよ、そういう場合でも歴史をみるには十分に機能しているかも。ぼくは人に対して「ちゃんと歴史をみろ!温故知新だろ」なんて言うタイプの人間じゃないんだけど、たしかに何かしら役に立つだろうね。たとえば、僕だって『The Man Who Souled The World』を観ていなかったら(スティーヴ・)ロッコのことは理解できていなかっただろうし。

__(映画に登場する)ステファン(・マークス)、アダム(・セロ)、ポンタス(・アルヴ)とボビー(・プーリオ)とは作品を作りはじめる前から知り合いだったのでしょうか? 

いや、全然! ハンブルグに引っ越す少し前にまずステファンと知り合って、僕は10年来の彼のファンだったんだけど、まぁ仲良くなって。で、僕が彼の名前を利用してこの企画を成功させようとしているわけじゃないんだと認めてくれてからは本当に全面的に協力してくれたんだ。そしてステファンがポンタスを知っていたから、ポンタスにもこの映画に参加するように何度も後押ししてくれていたみたい。でもポンタスは撮影のスケジュールをおさえるのに2年もかかっちゃって... アダムもすぐに理解してくれてこのメンツの中に自分も加わるなんて「光栄だ」と言ってくれたほど。ボビーは連絡先がわからなくて会えるまでちょっと時間がかかったね。やっと連絡先がわかって、僕の企画を話したところ、彼も快く承諾してくれたよ。だから基本的にはみんな撮影を通して知り合った感じだね。

__撮影中の面白いエピソードは何かありませんか?

そんなの何時間でも話し続けていられるよ! 象徴的だったのはボビーとの出会いだったかな。彼は全然メールの返信を送ってくれなかったのに、とりあえずニューヨークに行ったら路上でばったり会っちゃったんだ。僕らはひとまずブルックリン見物にでも行こう、と一応カメラやマイクなんかも持って出かけてみたら道の向こうから彼がスケートボードに乗って現れたんだ。あと、マイクと言えば、ボビーは首元にピンマイクを付けるのをいやがった。彼が言うにはそんなものを付けていたら回りの人の目を引いて仕方がないらしい。でも代わりに使った2メートル先の音も拾えるような集音マイクの方がよっぽど目立っていたと思うよ。あれは灯台なみだったよ...
そしてポンタスに会ったのは彼が自分の誕生日パーティーを仕切っている最中だったんだけど、あれも印象深いものがあったよ。30歳の誕生日、新作の映画も仕上げなきゃいけないし、スウェーデン以外からやってくる50、60人の招待客たちのケア。みんなを空港まで迎えに行って、マルメを案内してあげて、コンテストにも顔を出して... それを全部僕たち撮影クルーに囲まれた状態でこなしていた。あの週末に彼が発狂しなかったのは奇跡だったよ!(2010年5月16日、ポンタス・アルヴの30歳の誕生日は彼の2作目となる作品『In Search of the Miraculous』の初公開プレミア上映会もかねていた)
3年の製作期間の間、結局はほぼすべてがうまくいってくれた! カメラの故障もないし、ケガもなし、撮影クルーに逮捕者もでなかったし... 撮影開始の2週間前に写真を担当してくれる最高の人にもめぐり会えた... 普通なら毎日いきあたりばったりの連続になるところが、なんとかやってのけることができたよ。
あとは編集だね! 8ヶ月間、編集ルームにこもってこの大きなパズルをいじりまくってなんとかハーモニーを見つけ出したり、逆に数ヶ月前に計画していたことを帳消しにしてみたり... いつだって編集は一番興味深い段階なんだ。作品が「生み落とされる」過程を目の当たりにできるのは最高だ。
そしてインタビュー! スケート・シーンの様々な人たちのインタビューを25人分も撮影したんだ。というのも登場する4人だけの素材で彼らを「説明」できるものかどうか自信がなかったから。でもそれが編集でも最高に嬉しい結果を生んでくれた。登場する4人には余計なあおりや他人の説明なんて必要ないことがわかったんだよ。でも、自分がずっと憧れていたような人たちに会うのは意外に簡単だったことがわかったのは嬉しい! ただ聞いてみれば、お願いしてみればいいのさ!

__映画の完成にとって最大の障害は何だったのでしょうか? 

編集するための場所探しだったね。大学から見放されて、自分でコンピューターを買って家で作業をはじめた頃にはルームメイトにとって悪夢みたいな存在になってしまった。乞食みたいにいつもバスローブを着て、色白になっちゃうし、煙突かよっていうくらいにタバコをふかしてばかり、口を開けば映画の話ばかり... でも、実はそれも楽しかったんだけどね!

__作品をDVDか何かで入手する方法はありますか?

待ってて! できれば2012年の春までにDVDとかブルーレイとかいろいろと作りたいと思ってる。それまではできるだけたくさんの映画祭にこの作品をアピールするつもり。何か決定次第、みんなに知らせるよ。DVDの流通はカーハートに助けてもらうか、あるいはポンタスが『In Search of the Miraculous』でやっていたみたいに自分ひとりでやってみるか、考えているところだけど。

カーハートのラーズとベルトラントには本当に感謝している。すべては二人のおかげなんだ、本当に! 彼らなしではこの映画は存在していなかったか、少なくとも完成までにはあと12年必要だったと思う! そして製作の間ずっと応援し、支えてくれていた上に最高のグラフィック・デザインまで加えてくれたミハエル・シュミッドとゲオルグ・ラインハートにも感謝したい! そしてなんと行ってもフェリックス・ゼンカー!フェリックス・ゼンカー!フェリックス・ゼンカー!まさに映画を突き動かしてくれたし、映像は彼に負うところが大きい。僕が頭の中に描いていたものを具現化してくれた彼に多大な感謝を!

Check Out:
http://weloveyou-themovie.de
http://carhartt-wip.com/category/skate/
http://insearchofthemiraculous.se/