luecke

夢見る文系スケートボーディング愛好家

GREG HUNT interview from ONE GIANT ARM

イギリスのアート〜カルチャー・ウェブONE GIANT ARMに掲載されたグレッグ・ハントのインタビューの和訳となります。STEREOのプロ・スケーターから写真や映像方面へと転向した彼の人柄や仕事に対する姿勢がよく表れたインタビューでしたので許可を頂いた上で和訳させてもらいました。

Greg Hunt Interview
taken from ONE GIANT ARM web with permission
original interview by Joe Williams
translated by Katsushige Ichihashi(Luecke)

http://onegiantarm.com/2011/10/04/greg-hunt-interview/

グレッグ・ハントは元プロ・スケーターにして現在はロスに住む映像作家、そして写真家である。スケートボーディング界におけるいくつかの傑作の撮影を手がけるかたわら、彼は常に写真も撮り続けてきた。その結果生まれたのは様々な人々、場所、そしてストリートで生きる者たちのライフスタイルにえてして起こる奇妙な瞬間を記録したイメージ群のアーカイヴだ。
その彼の仕事ぶりやこの度開催されることとなった初の写真展に向けての準備などについて話を聞かせてもらうことにした... 是非、読み進めて彼についてもっと知ってもらえれば幸いである。

まず、あなたを知らない方々のためにお名前、職業や現在住んでいらっしゃる場所などを教えてもらえませんか?

僕の名前はグレッグ・ハント。ロサンゼルスに住む映像作家だよ。

最近は何をされているんですか? ちょうど初めての写真展が控えているんですよね? 準備はかなり大変じゃないかと思うのですが。

ロス周辺でいろいろと撮影しながら写真展の準備をすすめているよ。たしかに初めての写真展なんだけど、イベントは一夜限りだから果たして写真展とよんでもいいものかどうかわからないんだけど。まぁ、そんな定義はどうでもいいのかな? でも準備は楽しいよ。正直、まだ自分が何をしているのかよくわからないんだけど、過去15年分の素材があるから、その中から写真を選んでいるだけでも楽しい。唯一、大変なのはプリントして額に入れられるだけの分量に作品を絞り込むことだよ。あとはどうやって写真を壁にかけるのかよくわからないから誰か手伝ってくれる人が見つかればいいんだけど。

これまでにいくつかスケート・ビデオの根幹に関わる作品を手がけてこられたおかげで写真におさめるのに最適な材料にも事欠かなかったと思うのですが、写真家と映像作家としてのバランスや作業方法の違いをどう感じられていますか?

バランスに関しては簡単だよ。映像の撮影は僕の仕事であって、写真は完全に個人的なものなんだ。大きなビデオの仕事を手がけている最中は写真が唯一、自分のためだけに存在するクリエイティヴなはけ口になる。自分の好きなようにできるし、本当に撮りたいと思ったときだけ写真を撮ればいいからさ。その単純な行為だけでもものすごく重要なバランスを担っていると思う。映像作品にもたしかにものすごく自分を込めるけれど、もしも写真という自由をなくしてしまったらきっと僕は完全に燃え尽きてしまう。

映像を撮られる際は最新のデジタル機器を使っていらっしゃるのに、写真となりますと熱心なまでにアナログですよね? 写真、映像、そして映像作品のスティル用とそれぞれに使われる際のフェイバリットな機材を教えてください。あと、市場や機材におけるデジタル化の波に対して何か思うところがあればご意見を聞かせてください。

ビデオ用のカメラはただその仕事にとってベストなものを選ぶようにしている。僕は自分でビデオ・カメラを購入したりしない。だから機材に愛着を感じることもないんだよね。映像の場合、カメラはあくまでも僕が参加するプロジェクトや会社の所有物であって、ただの道具にすぎない。でも写真用のカメラだと違ってくる。この10年、写真用に使っているのはライカのM6。このカメラは本当に大好きでね。すごく丈夫だし、本当に素晴らしいイメージをとらえてくれるんだ。雨の中でも、手に持ったままスケートしても構わない。平気だってわかってるからね。デジタル写真に関しては、僕はそんなに撮らないんだけど、否定してるわけじゃない。ただ、何個もカメラを持ち歩くのがいやなだけなんだ。撮りたいと思う瞬間があったときに手段が多すぎると困ってしまうんだよ。「フィルムで撮ろうか? それともデジタルでいく? ミディアム・フォーマット? それともパノラマで?」なんてことのなると気が狂いそうになる。いざ決心がついたときにはもうその瞬間は逃げちゃってるし。だから本当に数個のカメラ、と自分に制限をもうけてその中でベストの作品を生み出すように努める方がいいね。たいていは一眼レフとM6、レンズは50mmと35mm。もうそれだけで。初めてのカメラは50mmのレンズがついたミノルタの一眼レフだった。最初は何年間もそれだけ使ってたね。だからもし今の機材が壊れたり、フィルムが完全に世の中から消えたりしたら僕は単純になにか違うものを使うだけなんじゃないかな。

あなたの写真が何度もFilm Por Vida(アメリカ、サンノゼの写真家Jai Tanjuがはじめた、写真にそのまま郵便切手を貼り、郵送で送り合う実にアナログでユニークな、ある意味行為自体もアートな写真交換プロジェクト)に登場するのを見ました。Jaiのプロジェクトはアナログとデジタルの境界を超える面白い存在ですが、インターネットや新たに登場した様々なメディアはあなたの作品に何か影響を与えていると思われますか?

Jaiのやっていることは最高だよね! 面白いのは彼のウェブサイトFilm Por Vidaはフィルムで撮られた写真、郵便、人の手から人の手へと写真を交換するというすべてアナログにこだわった行為であるはずなのに、そのおかげで僕は写真を発表したり、共有したりするのにより深くインターネットを利用するようになったことなんだ。インターネットを介して写真を発表するのは最高じゃない? 簡単だし、本当にたくさんの人に届けられるから。インターネットが僕の作品に何か特定の影響を与えているかどうかはわからないけれど、作品を発表したり、たくさんの新しい出会いを得るには素晴らしい手段だと思う。インターネット時代のマイナス面なんて、ネットで他の人の作品を見る時間が増えちゃって自分の製作時間がちょっと減ってしまうことくらいじゃないかな。あれこれ見ているとあっという間に時間が経ってしまうんだよね。

(double exposure collab with jai tanju no. 9)
スケートボーディング界には各時代を記録し続けたたくさんの写真家がいますが、あなたに一番大きな影響をあたえ、今でも尊敬する写真家、となりますと誰でしょうか?

一番影響されたのは間違いなくゲイブ・モーフォードだね。この20年間、スケート雑誌を読んだ経験がある人なら絶対に彼の写真に馴染みがあるはず。今のところ史上最大のスケート写真アーカイヴを持っているのはゲイブ・モーフォードに違いないよ。時代を超えるスケート写真にポートレイト、とにかく彼は常に写真を撮り続けているんだ。そして彼の影響力は写真を超えたところにまで及んでいる。いまや当たり前になっている、地面のひび割れをパテで埋めたり、夜中の撮影時に発電機を使ってスケート・スポットに照明をあてたりする手法もまさに彼が生み出したんだよ。とにかくものすごい仕事量。それに何と言っても彼が僕に初めてのカメラをくれて、撮り方からプリントの仕方まで教えてくれたんだ。ゲイブのやることなすこと、すべてが僕のあこがれ。ゲイブに対して同じようなコメントを寄せる人はたくさんいると思うよ。

ご自身がまだスケーターだった頃から映像作家や写真家になりたいという思いがあったのでしょうか? もしもそういうわけではなかったのだとしたら当時はどのような進路を思い描いていましたか? また誰の影響で、あるいは何のきっかけで撮る側に回ることになったのでしょうか?

いや、当時はまったくそういった思いはなかった。ただスケートして、プロ・スケーターになりたかった。でも皮肉にも、プロ・スケーターになったとたんに写真家になりたいと思うようになっちゃったんだよね。でもスケート・フォトグラファーというわけじゃなくて、ただただ写真を撮りたいと思っていた。プロの写真家になりたいという思いでもなく、ただ若くてやりたいこともよくわかってなかった。でも写真に対する思いは本物だった。そしてなんとなくここまで来てしまった感じなんだ。スケートボーディング後のキャリアとして最初に意識したのは映画のカメラマンだった。でもスケートボーディングじゃなくてドキュメンタリーとか他の映画を撮るような。結局はまたスケートボーディングに戻ってきちゃったんだけど。

この世界で様々な人と関わってこられましたが、もしも自分の好きな人を集めて撮影し、スケートし、晩にはそのまま飲みに行くような1日を与えられるとしたら誰を選びますか? またその理由は?

いやぁ、もうほとんど毎日そういう人達に囲まれて過ごしているんだよね。本当に今の仕事につけたことを感謝しなくちゃ。

スケートボーディング以外で、映像でも写真でもあなたがまかされてみたいと夢見る仕事は何ですか? 

そういう夢の仕事みたいなものはないんだよね。普通に、実直に「仕事」としてこなす方が自分の性に合ってる気がする。でもミュージック・ビデオをもっと手がけたいね。楽しいから。そしていつか映画の監督もやってみたいけど、まだまだ先になりそうだね。2年とか3年かかるような大きなプロジェクトをやり遂げたあとはいつも何ヶ月か休みをとって、何組かクリエイティヴな人たちを追いかけてその人たちの生活を撮ってみたい思いにかられるけどね。「A Moment in time(ある時代の、ある瞬間)」的な、ミュージシャンやアーティスト、プロ・スケーターとか、とにかく面白い人をあつかった作品を作ってみたい。委託されてこなせる範囲だとそこに落ち着くかな。

M83 "Echoes" from GREG HUNT on Vimeo.

M38 Album Teaser-2011
写真展のあとにはどのようなプロジェクトが控えていますか? 他にも展示会の予定はございますか? 

今回の写真展以降、とくに展示会の予定はないね。他のプロジェクトに関してはジェイソン・ディルと本を作りたいと思っている。彼との友情、つきあいに関する本。もうずっと作りたいと思っていたんだけど、ようやく取りかかれそうな感じ。すくなくとも僕の頭の中では準備オッケーだよ。あとは来年のはじめにデュエイン・ピートレ(Duane Pitre/ G&SやALIEN WORKSHOPのビデオに登場するDuane Pitreは現在ドローン系のサイケなギター・インストをやっているようです)とのミュージック・ビデオの話もある。でもこの先、2年ほど集中しなきゃいけないのはVANSのスケート・ムービーなんだよね。去年からかなり身をけずりながら撮っているんだけど、もう本当にVANSのプロジェクトを仕上げるまでは他のことは横においてそれだけに集中する覚悟を決めたよ。

多くの人から見れば、あなたはまさに夢のような人生を生きているように思えますが、そんな中でもできればやりたくない、関わりたくないと思うような要素はまだ仕事の中に存在したりしますか? 

運転だけはだめだね。この仕事のほとんどのことは好きなんだけど、運転だけは本当にみじめな気分にさせられる。運転以外にもできればやりたくないかも、なんて思うこともあるかな... あぁ編集かな。いや、技術的には好きなんだけど、撮影に製作に監督をこなしているようなときは編集まで担当しなきゃいけないとなると手に負えないんだよね。一人でこなすには無茶なんだよ。そこまでやるとなると完全に枯れてしまう。もちろん、自分の作品なら編集にも携わりたいとは思うんだけど、誰かと一緒に手がけたい。映像作品は共同作業から生まれるのがベストだと思っているし。

スケートボーディングや写真の世界で誰か注目すべきアーティストはいますか?

もしもまだチェックしていないならジェリー・スーの写真は見ておいた方がいいよ。彼には物事に対する独特の見方があると思うんだ。あとはフレッド・モルターニュことフレンチ・フレッドだね。彼は本当に才能のかたまり。もうそうとしか言いようがない。

用意していた質問は以上となりますが、なにか最後にメッセージなどございましたら、是非。

若い写真家にはとにかく好きなものを撮って、そしてできるだけ働け、動けというメッセージをいつだって伝えたいと思っている。世の中は何かと大変だからね。そして家族や友達のみんなにはHelloを言いたいかな。

まだあなたの作品を知らない方々のために、どこかあなたの作品に触れられる場所はありませんか?

http://www.huntfilmwork.com
http://www.huntfilmwork.tumblr.com
http://www.skate.vans.com
http://filmporvida.blogspot.com/   をチェックしてみて。


いかがでしょうか。映像作品に対してはあくまでも請け負った仕事をこなす職人、どこかクールに線引きをした姿勢(もちろんそれでも十二分に熱い仕事をこなしていますし、撮影にかける情熱は並外れたものがあることでしょう...)、そして相反して写真には限りなく愛情を注ぎ込むその姿。自身で管理していると思われるウェブでも映像、写真と各ジャンルの仕事を分かりやすく網羅しているあたり、本当にマメできっちりと自分の美意識を貫く人なんだろうなぁと思い知らされます。でもポートレイトに映る彼のまなざしはいつもどこか暖かい。本当に魅力的! 以前、HAMBURGER EYES経由でジンも出していましたが、また写真を集めた本もいつか出版してほしいです。そしてALIEN WORKSHOPの『Mind Field』に続く大作は目下撮影中のVANSのビデオ、いつ完成するのやら見当もつきませんが楽しみ待っていましょう!

そしてグレッグがインタビュー中で推薦していたフレンチ・フレッドの写真が滅茶苦茶ヤバイです!

インタビュー中に触れられている写真展は10月14日に一夜限りで開催されるこちら... Vans Syndicate Greg Hunt 'Selective Memory'

Selective Memory from GREG HUNT on Vimeo.

http://www.vanssyndicate.com
http://www.dempasswords.com